「うわーっ! 見て、サフィ!」
「これは見事に桜が咲き誇ってますねえ」
馬車の窓から見る景色は、薄桃色の吹雪が舞っていた。

季節はもう春。
馬車に入る風も涼しく、心地よい。
今日は久しぶりに、アレクとサフィルスは郊外へ出ていた。
いつも部屋に閉じこもっていてばかりでは体調も悪くなる一方だ。
そう思い、気分転換もかねて外出することとなった。
それにアレクの体調は、このごろは安定している。
多少の遠出も今のアレクなら耐えられるだろう。

…まだ、そのときは遠い。
考えなくていい。
そう悲観的になる思考をサフィルスは振り払った。

アレクを見ると、隣でうずうずとしている。
「外に出たいって顔してますね」
「だって遠くで見て、こんなに綺麗なんだよ!」
だから余計近くで見たいのだろう。
「ええ、桜狩にでも行きたくなりますよね」
「桜狩!? 花狩っちゃったらもったいないじゃん!」
アレクの言葉にサフィルスは笑って答える。
「違いますよ、アレク様。桜狩というのは、桜の花を観賞しながら山野を歩くことです」
「なんだー。びっくりしたー」
心底安心したのか、ふうっと息を吐く。 
「なあなあ、今観にいけるかな? 時間ある? 俺の体調なら大丈夫だからさ」
「そうですね…30分ほどでしたら何とか」
「うん、それだけの間でもいいや」
「では行きましょうか」
嬉しそうなアレクを見、自然にサフィルスも笑顔となっていた。


咲き誇る満開の桜の下、二人は桜見物をしていた。
穴場なのか、ちらほらと幾人かの人が居るだけで、巷のようにごった返しては居ない。
これならば安心してゆっくりと観ることが出来る。
不意に春風に乗った桜吹雪が緩やかに舞った。
その風に乗って、一枚の花びらがアレクの帽子に落ちる。
「あ、アレク様、花びらが」
すっと桜の花びらを手に取る。その動作を見ていたアレクが声を発した。
「今度サフィの煎れてくれたお茶に入れて飲みたいな、それ」
「桜漬にして…桜湯にして飲みましょうかね。それでは、取っておきますね」
でもこれでは少し量が足りない、とその後二人で花びらをもう少し集めることとなった。
「ピークの時期にくればもっと凄いんだろうなぁ」
花びらを集めていたアレクが不意に呟いた。
「ちょっと花見の時期は過ぎていますね。今地面が桜の絨毯みたいになっていますが、これが全部あの枝で咲いていたわけですから。時期にくれば、この辺りが一面薄桃色の桜で覆われていますよ」
「うー、惜しいなぁ、もうちょっと早くかー…、ね、サフィ、今度は絶対満開のときに桜狩に来ようよ!」
「はい」
また来ましょうね。
その言葉を口に出して、サフィルスはしばらく桜を仰ぐ。

来年も、再来年も、この先もずっと…出来ればこの命が燃え尽きる瞬間まで。
それは希望的観測かもしれないけれど。
願わずにいられない。

愛しい人と一緒にこの桜を見ることを。





飲まないEDその後というのをイメージしてます。
サフィEDを見直した勢いでがーっと書きました…。
花見は果たしてあの世界にあるんでしょうか…判りませんが書いてしまいました。

ジェイプラでは出来ないことをこの二人にはやっていただきたいと思います(笑)
ギャグ路線を希望…(笑)。




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