「はぁ〜い、プラチナ、元気してる〜☆?」
「…お前…、部屋に入るときはノックをしろ」
「え〜、プラチナ様とロードの仲でしょー、今更、今更っ」
そのまま、ずかずかとプラチナの傍まで寄ると、ロードは意気揚揚と語りだした。
「今日はすっげーアイディアがあるんだけど!」
「…何だ。厄介事なら御免だぞ」
「そーじゃねーって! 仕事なんだけどさー。あれからいろいろと考えてみて、俺にぴったりな仕事思いついたんだよ!」
おそらく先日の一件のことを指しているのだろう。
「俺が王妃になんの!」
「却下だ」
「ってはえーよ! なんだよ、そんなに即答しなくたっていいじゃんかよー」
王妃に、あたりですでにプラチナの口が動き始めたような気がしたのは、おそらく気のせいではないだろう。
「悪くないアイディアだと思うんだけどなー。王妃になったら堂々とお前の傍にいられるし、お前だけ世話できるし、何より公認じゃん。それに俺みたいなナイスバディの后が出来たら、国民も目の保養が出来ていいと思うしよ!」
「お前が王妃になったら、新たな頭痛の種ができる。それに王妃と言っても礼儀作法や言葉遣い、国に纏わる様々な知識…それら全てが必要となる。お前が考えているような簡単なものじゃない」
「ええーーーーっ!! なんだよ、何でやってもみないうちからそんなこと言うんだよー。やってみないとわかんねーじゃん」
「…もう、お前の今までの行動や言動で嫌と言うほど予想がつくと思うがな」
「もー、プラチナ様ってば☆ 愛があればそんな障害どーにかなるって!」
「……」
暫くプラチナは逡巡した後、口を開いた。
「…そうか、判った」
「マジで?」
「その代わり、それなりの教育を受けて、お前が耐えられたらの話だ」
「やるやる!」
間髪をいれず返答する。
多少のことなら自信がある。
「ジェイド」
「はい、プラチナ様」
プラチナの呼びかけに、部屋の片隅に居たジェイドが前に出た。
「うわ、びっくりした! 何だ、居たのかよ、居たなら声かけろよな」
突然のジェイドの登場にロードが声を荒げる。
「貴方がここに入ってくる前から、ずーっと居たんですけどねぇ」
そういえばこの部屋に入ってきたとき、プラチナは誰かと話していたような気もする。
ロードの視界にはプラチナしか入っていなかったため、結果、どうやらずっと無視する形になっていたらしい。
「あはは、悪い、悪い。ちーっとも気づかなかったぜ」
「全く誠意がこもってない謝り方ですね…別にいーですけど」
「で、この参謀殿がなんか関係あんの?」
「ジェイドに教育係となってもらう」
「はぁ!?」
プラチナの突拍子ない提案に、ロードは素っ頓狂な声をあげた。
「俺の王となるための知識はジェイドから教わった。ならお前もジェイドから学んだほうが手っ取り早いだろう」
「いや! 無理! こいつから教わるのだけはちょっと勘弁!! って言うか大体ジェイドだって忙しーし! なあ?」
「未来の王妃を育てるのも悪くないと思いますよ、私は。ロードは教育のし甲斐もありそうですし。…教育のね」
限りなく教育が調教に聞こえた気がして、思わずロードは身を構えた。
裏がある。この言葉にはきっと壮大な裏が隠されているに違いない。
しかもジェイドからしてみれば、折角のプラチナとの語らいを邪魔されたのだ。
憎悪二倍、いや百倍ぐらいになっているだろう。
「それに、教わった上で貴方が挫折するのなら、今後血迷ったことも言わなくなるでしょーし」
「どんな教え方するのか考えただけで怖いんだよっ!」
おそらく二度とそういう気が起きないよう、徹底的に扱くつもりだろう。
プラチナに集る蝿は叩き落す。そう目が物語っていた。
そもそもジェイドはこうしてロードがプラチナの傍にいること自体、快く思っていないのだ。
それはロードも同じなのだが。
お互いに邪魔な存在。
虎視眈々にその排除を狙っていた。
「いやいや、これも貴方のやる気次第ですよ、ね? プラチナ様」
「そうだな」
ジェイドの問いかけにプラチナは素直に答えた。
プラチナに悪気はないのは判る。
が、この仕打ちはあんまりだ。
「やっぱ、王妃じゃなくていいや! 妾とか側室とか愛人あたりで!!」
「そーいうのプラチナ様が持つと思います?」
「う゛っ。…あー、もう! でもなぁっ! ぜってー無理だって!」
「やってみないと判らない、と言ったのはお前だろう」
プラチナにそう指摘され、ロードは口篭もった。
確かに言った。…言ったのだが。
ちらり、とジェイドに視線を投げる。
ジェイドは不敵な笑みを浮かべ、ロードの視線を受け止めた。

…分が悪い。
戦いなら負ける気は毛頭もないが、今回はジェイドのほうが有利だ。
関係で言えば教師と生徒、師匠と弟子。
明らかに劣勢だった。

「すっぱり諦めて頂いて、おとなしく士官として働いていただけると、こっちとしてはありがたいんですけど」
そう言ってロードに目をやる。
そうだ、こいつはこういうヤツだった。
ロードは改めてジェイドという男の性格を再認識する。
にっこり笑って腹黒い。
士官に就いてしまったら、地方へ赴く回数も多くなる。
自分が居ない間、プラチナの傍にいるのはこのジェイドなのだ。
それを知っているからこそ、敢えてそれを勧めているのだ。
ロードが士官となれば、ジェイドにとってみれば有益なことばかりだ。
そう思うと、多少なり士官になる気が合ったとしても、やる気が萎える。
「お前ってホント可愛くねーな!」
「貴方に可愛いって言われても嬉しくありませんしねえ。ま、プラチナ様への愛とやらでせいぜい頑張ってみてくださいよ」
「おうおう、やってやろーじゃねーか。後でほえ面かくなよ? ジェイドちゃん」
限りなく挑発めいた言動に、当然ロードにも火がつく。
売り言葉に買い言葉。
ロードがこれを後悔するのはもう少し先のことだった。

奈落王といえば。
そんな二人の止まる事ない口論を見ながら、新たな頭痛の種に頭を悩ますのだった。



なんだか続きがありそうな終わり方になってしまいました。えー、また内容がないです(汗)
いつものことなんですが、かなりへこみます…我ながら。
でも本人は楽しんで書いているので許してください(許せぬ)

ロードを王妃様にしてみたら楽しいんじゃないかなー計画第一弾!です(笑)
ロードはギャップを書くのが楽しいですね♪
でも全然ロード×プラチナに出来なくて残念です(滝汗)。次こそは!←書く気らしいです…この人…。


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